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三屋清左衛門残日録 (文春文庫)
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| ジャンル: | 歴史,日本史,西洋史,世界史
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| 人気ランキング: | 41492 位
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用心棒日月抄第5巻?
タイトルを読むと、かっては用人まで出世しながら、今は隠居した老人の、老いの日々を綴ったものに読め、それは間違いではないのですが、ある藤沢周平さんのファンのHPにも、用心棒日月抄の第5巻とあったように、実際の内容は、隠居した主人公が、釣りや、酒、息子夫婦との日常生活の一方で、かっての藩内での地位を活かし、藩内の政争にまで巻き込まれ、それを解決してしまう活躍ぶりを描いたものになっており、まさに、用心棒日月抄5巻と紹介してもよさそうな内容になっています。
ある意味、裏切られた内容にはなっているのですが、藤沢周平さんならではの、老いについいての料理の仕方もあり、面白く、また、考えながら読める本になっています。
「梅の一枝」にさえ命をいとおしむ心持
2008年の水無月は、胸の痛む通り魔事件や東北の地震など切ない月でした。物価も値上げ値上げできゅうきゅうしております。働き盛りの40歳、後を振り返る暇もなく毎日が過ぎてまいります。
御用人時代の三屋清左衛門も、そんな心持だったのでしょうか?
日残りて昏るるに未だ遠し・・・。
なんと読みやすく、そして清左衛門の爽やかな人となりなのか。澱みに浮かぶ権力争い。三屋清左衛門
が切れ者として重宝がられるのも、その柔軟な姿勢と剛健な精神のバランス感覚に優れたゆえんではないかと思うのです。権力争いばかりではなく、夫婦の心、友のこと、泣き妻への悔恨に漣立つ心。三屋清左衛門は隠居しても慕われ、なお諸事に力を尽くし、何より「梅の一枝」にさえ命をいとおしむ。
昨年、本当に遅ればせながら「蝉しぐれ」をドラマで見、そして原作を読み藤沢周平の世界に入ったばかりの新参者です。三屋清左衛門残日録もドラマと並行して原作を楽しむ至極の時間を味わえました。
このような味わい深い作品に出会えて幸せです。
こんな年寄りになりたいものです。諸事に力を尽くし、何より「梅の一枝」にさえ命をいとおしむ心持
。それは遥か先のことではないと思います。日々を懸命に過ごしていたら辿り着いた日々。これより私の行く道を照らしてくれるそんな作品との出会いでした。ドラマと併せまして最大級の御勧めです。
老境を赤裸々に描いて新境地を開いた秀作
さる藩の元傍用人の清左衛門の引退後の日々の生活を小事件を交え淡々と綴ったもの。清左衛門は引退して早く"暇になる"事を夢見ていたが、いざ暇が出来ると寂寞間に襲われる。会社員の私にも良く分かる現代にも通じる心境である。このままではいけないと、勉学や武道、そして釣りに励む決意をする。それと共に「残日録」と言う日記を書き始める。それが本書の内容である。「残日録」とは「後何日生きられるか」と言う消極的なものでなく、「日残りて昏るるに未だ遠し」と言う意気軒昂な証の由。
清左衛門は元用人という要職にあって、今では隠居の身であるから、藩内に顔が利く上に自由である。このため、藩内の公にはできない事件の解決をしばしば頼まれる。解決しても当然俸禄には繋がらない。だが、清左衛門は無為の生活ではなく、事件の渦中に飛び込む方を選ぶのである。事件と言っても、ハデな謎解きはなく、主に家中の人間模様の悲喜劇が描かれる。清左衛門自身に降り掛かる災厄もある。これも家中の人間関係の中から生まれる。清左衛門は清廉な性格で頭も切れるが、人が良過ぎてメガネ違いの事もある。嫁の里江の方が鋭いと思う事さえある。しかし、それもまた微笑ましい。年老いてから想う若き日の淡い思慕の念も共感を誘う。夫の浮気を疑う娘の悋気をキッカケに、藩の権力争いに首を突っ込む親バカ振りも見せる。公務を退いた後、無為に生きるのではなく、日々の暮らしの中のフトした出来事に喜び、悲しみ、怒り、悔恨を覚える清左衛門の様が理想的な余生の過ごし方に映る。四季折々の風景描写も物語に自然に溶け込み、清左衛門の心の移ろいを巧みに表現している。特に雷を頻繁にストーリーの分岐点に使っているのが印象的。
時代小説として優れているのは勿論、老境を赤裸々に描いて新境地を開いた秀作。
30代で読んでみました
蝉しぐれがよかったので、次の藤沢作品は何を読もう?と皆さんのレビューを読み倒しました(笑)。蝉しぐれと、こちらの作品が双壁のようなので、「この若さで読んで味わえるのか?」(←時と場合で、年とったり若くなったりします…)と不安でしたが…いい味わいでした。 連作短編なので、蝉しぐれより読みやすいと感じたくらいです。 そして様々な事件の間に入って、骨を折る清左衛門の働きは、現在の組織社会の中での課長を思わせるよう。実際に50年、60年と現実を生きてきた人の中から出てくる、知恵、経験を感じます。 蝉しぐれは叙情的ですが、こちらは落語的と言いますか、以前連続ドラマ化されたそうですが、しやすいと思います。とは言え、読む方の年齢なりの読み取り方があるでしょう。そういう味わいを感じました。 30代でこういう感想です。ご参考までに。
『人生後半に読むべき本』の推薦本
谷沢永一氏と渡部昇一氏の『人生後半に読むべき本』で推薦されていたので手にとってみた。藤沢周平は恥かしながら初めて読む。
隠居した初老の侍の身の回りで起こるちょっとした事件を描いたものでNHKの連ドラみたいだなぁと思っていたら、昔本当にやっていたそうだ。
初めて読んでよしあしを言うのもはばかられるが、重厚な文章と、渋めのストーリー展開がいい。描くのは変哲もない日常だが、ついつい引き込まれてしまう。
谷沢氏と渡辺氏は、小説を読むというのは自分にとっては現実逃避だ、というようなことを言っていたが、こういう本に出会うと確かに、その言葉がわかる気がする。作品世界にいつのまにか浸りきってしまって、読み終わって現実に戻った瞬間、ある種の虚脱感を味わう。
人生後半に読むべき本、ということだったが、まだ自分にはまだ早すぎるかな、と思った。もう少し年をとって、それこそ隠居して、しばらく現実に戻ってこなくてもいいような身分になってから、ゆっくり手にとってみたいと思う。
文藝春秋
よろずや平四郎活人剣〈下〉 (文春文庫) よろずや平四郎活人剣〈上〉 (文春文庫) 日暮れ竹河岸 (文春文庫) 用心棒日月抄 (新潮文庫) 麦屋町昼下がり (文春文庫)
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